三十路たぬきの日々是好日

大学で働く三十路の多趣味男が、仕事や事実上事実婚状態の事実に苦悩しながらも前に進もうとする日々を素直に綴っていきます。教育、仕事、マインドフルネス、事実婚、趣味のお話などなど

赤っ恥について

「赤っ恥」とは只の恥ではない。

公衆の面前でうける、赤面するほどの酷い恥のことである。

「あら、いやだ。恥ずかしい」程度のリアクションでは、まず済まない。「赤っ恥」を目撃した際には、ある人は必死に笑いを堪えてプルプル震え、ある人はお連れ様とヒソヒソと笑いのタネにし、またある人は思わず二度見してしまうかもしれない。

 

つまり大層な笑い者にされてしまうこと間違いなしであり、当事者としてはその状況に陥っていることを知らない方がいくらかシアワセなのではないかとも思える状況なのである。

 

30年ほど人生を歩めば誰しも赤っ恥をかく経験の1つや2つはあることだろうけど、かく言う私も先日赤っ恥をかいた。まぁ、気楽に読んでいただきたいと思う。

 

その日は私が勤める大学が、横浜で開催される合同説明会に出展するということで、私も大学の相談員の一人として召集されていた。

 

イベントは11時から開始だったが、ブースの準備やら資料のセッティングやら、やることは沢山ある。余裕をみて9時には会場に着いていなければならない。

 

埼玉住まいの私は、さらに用心して電車の遅延が発生することや道に迷うことを想定し、さらに30分程早く着けるように7時には家を出た。

 

その日はバレンタインデーを直前に控えた2月の3連休の初日で、今季にしては珍しい雪も朝からちゃっちゃか降っていた。

 

「この雪じゃあ、あまりお客さんも来ないかもしれないなー」なんて思いながら、真っ白な車窓を眺めつつ横浜へ向かった。

 

幸い雪で電車が遅れることもなく、予定通りの時間で横浜に着いた私はまず会場の場所を確認してからスタバでブラックコーヒーとサンドイッチの朝食をとり、ゆったりとそごうの6階にある会場に入った。

 

準備もバッチリ整い、10時を過ぎてそごうも開店。横殴りの雪が降っているというのにバレンタインデーのチョコを調達せんとする若い女性であっという間にそごうはいっぱいになった。

そんな様子を伺いつつ、11時の開場を迎えると来場者のみなさんがドッとやってきた。

説明会にやってくるお客さんもどことなく若い女性が多い気がする。とにかく次から次へとやってくるお客さんに声をかけ、大学の説明会をし、お昼休みもなかなか取れない忙しさだった。

 

ようやく人の波が落ち着いたところで、同僚のMさんと食事休憩に行こうということになったところでコトは発覚する。

 

「いや〜疲れたなぁ。思ったより盛況でしたねぇ。腹減った〜」なんていいながらおもむろに腰のあたりに手を当てると、なんだかオシリの辺りがスースーする。

 

なんと右側のオシリのポッケのすぐ下あたりでズボンがパックリと裂けて大穴が開いてるではないか!

しかも、破けている場所がはかったように絶妙で、ちょうどパンツとお尻の境界線上にスポットを当てており、私が歩くたびにパンツとお尻がチラチラ見える。

 

私は文字通り絶句して、身体を半身に捻った体勢で固まった。

「おーい、どうしたの?早く飯にいこうぜー」

同僚のMさんが暢気な声をかけてくる。

この相手もまた悪かった。Mさんは仕事はバリバリとこなすやり手なのだが、歩く週刊文春の如く、人のスキャンダルが大好きで、一度ネタを得たら油に火をつけるが如き早さでウワサが広まる。

このままだとズボンだけでなく、スマート系スタイリッシュサラリーマンのキャラクターを目指してきた私のイメージまでビリビリに破けてしまう。

 

だが、こういうとき、いかにも恥ずかしそうに、マズイことが起きたと感じ取られてはイカンのである。

それこそ「恥ずかしいヤツ」のレッテルをベッタリと貼られてしまい、陰日向でヒソヒソと笑われるハメになる。ならばいっそのこと自らを盛大に笑い飛ばし、道化を演じることにした。

 

「うーわ!やっばい!Mさん!ケツが破けた!あっはっは!」半ば以上にやけっぱちである。

 

だが、これが奏をなしたのか知らんが、Mさんも爆笑していたけどその後の吹聴は明るい笑い話となった。

とりあえずオシリを押さえながら昼ごはんのウドンを食べて、そごうの中に入っているloftでソーイングセットと当て布を買ってきて、トイレに篭って応急処置をした。Mさんもソーイングセットを探すのを手伝ってくれたが、持ち場に戻る際には「このこと話しても良いけど、なるべく盛大な笑い話にしてくださいよ!」とへんなクギを刺しておいたのも良かったのかもしれない。

 

それにしてもいつから破けていたのだろうか。朝、支度して家を出る時には確かに破けていなかった。

とすると、横浜までの道中か、会場の準備をしている間であろうか。

しかし破れ方をみるとなんだかかぎ裂きのようであり、しゃがんだ拍子に「ビリっ」といった感じでもない。

そういえば、横浜に来る途中の電車で隣に座っていたオッさんが何やら不遜な態度でずっとモゾモゾしていたな…なんて変に疑り深くなる。

それよりもバレンタインデー前で若い女性が溢れる横浜の百貨店でずっとケツをチラつかせていたと思うと情けなくなる。

エスカレーターに乗ったとき、私の後ろに立った人はどんな人だったか…よもや石原さとみのような超美人ではあるまいか…その人は目線の高さに私の何を見たろうか…そう思うと切なくて、文字通り赤面である。

 

結局、午後からはツギハギのズボンでなんとかしのいだが説明に没頭していてもオシリのあたりがずっと心細かったのを覚えている。

 

とりあえず、翌日から朝の支度をする際にはズボンのお尻まわりは念のためチェックするようになったことは言うまでもない。